ホネラ海岸
予想外だった。
出発前に西表島の南側、大原港周辺で見た海岸は軽石も少なくゴミもほとんど落ちていないキレイな印象だった。
それだけに、島の北東にあたるこの海岸の風景には思いがけずショックを受けた。
見渡す限り延々とゴミやプラスチック片が打ち上げられているのがわかり、灰色の軽石が分厚く堆積していた。
しばらく佇んだ後、県道には戻らず海岸を歩いてみることにした。
ゴミのひとつひとつをよく見てみると、日本のゴミもちらほら落ちている。
けれど、少なくとも僕に見えた範囲では、多くは漢字の外国語(詳しくないので台湾語や各種中国語、どの国や地域のものかは判別できない)で書かれたゴミだった。
歩いている人に聞いてみると、今は風と海流の関係でどちらかというと北の方に軽石とゴミが流れ着いていて、これからの季節は徐々に南にも行く可能性があるとのこと。
歩いたからこそ見られた光景の一つ、ショックながら、見れてよかった。
軽石と漂着ゴミは、清掃活動をされている団体の方々も地元の方々も、頭を悩ませる問題なんやろうな…。
ランチ@ジャングルホテル・パイマヌヤ
西表島の外周を歩こうとすると、特に大原港~上原港間は本当にレストランや商店がほとんど無い。
今回は、(うまくいけば)お昼時に立ち寄れる唯一のレストランがジャングルホテル・パイマヌヤさんだった。出発地点からの距離はおよそ21km。
大原エリアを出てから通過したお店はGoogleマップで見る限り「古見村」さんと「かまいとぅやー」さんの2個所のみで、どちらも今日はお休み。
なので、ランチタイムが終わるまでに21km歩かなければいけないというのが今日の最難関のミッションだった。
ホネラ海岸からは、あと2kmちょっと。
コンクリートの道を歩き続けて出てきた足裏の痛みと闘いながら、ランチを目指す。行動食も食べつつだったけど、だいぶお腹も空いてきた。
そして無事、12時過ぎにパイマヌヤさんに到着!
クーラーの効いたレストランで、タコライスを頼んだ。
疲れた。。美味い。。
拾ってくれた救世主
それからも、約15kmは店が全く無い。
まだまだ続く午後の道に備えて、1時間たっぷり席で休ませてもらった(お客さん自分以外誰もいなかった)。
そしてまた、15km歩く覚悟を決めてよいしょっと歩き出す。
何度も目にするイリオモテヤマネコ注意の看板と道路への侵入を防ぐ柵の数々は、事故を無くそうという西表島の意識の高さを感じる。
これまでに長く色んなことがあったんやろうなぁ。
カンムリワシの標識も。見られるかな。
そしてしばらく歩くと、歩道がだんだんと荒れてきた。
アスファルトがひび割れ、草が生い茂って歩きづらくなってくる。
本当に、このあたりを歩く人はほとんどいないのが良くわかる。
ここよりも他に予算をかけるものがたくさんあるのだろうし、歩道の整備の優先順位は極めて低い模様。
もはや歩けない(笑)ので、車道の端を気を付けながら歩く。
たまに見かける見事な月桃の花やアダン、板根が美しいサキシマスオウノキに心癒される。
謎にハサミだけ微動だにせず出ているカニ(?)を見つけたところで、足がまた痛くなってきた。
怪我は最悪なので、靴を脱いで地べたで休憩しつつ、少しずつ進む。
車は時折通れど、歩く人には相変わらず誰にも会わないので結構孤独な道のり。
今夜泊まる宿まであと4km。大丈夫そうだ、がんばろう。
と思ったところで、一台の車がハザードを点滅させて前方で停まった。
これはまさか…。
近づくと窓を下ろして「乗っていきますか?」と言ってくれた。
ヒッチハイクしていないのに、停まってくれた!
歩行者が誰ひとりいないなか僕だけ歩いているのを見て心配になって声をかけてくださったのだった。
ありがたい…
あと2kmで着くのでお断りして最後まで歩こうかとも一瞬思ったけれど、せっかくのご縁なのでお言葉に甘えることにした。
お二人は愛知から来ている親子で、西表島をレンタカーで観光中だったらしい。
最後、気力で歩いていたしんどい時間から急に解放されたので、ホッとした気持ちもあって話が弾む。
オルタナティブスクールやフリースクールの話題でひと盛り上がりして、ものの数分で宿に到着。
少し入り組んだ場所にあるのに、宿の前まで行っておろしてくれた。
大変助かった、ありがとうございました!バイバイ!
宿泊🌙
初日の宿に選んだのは、上原港から徒歩20分くらいの場所にある「いるもて荘」。
上原港周辺は宿が比較的多く、サーファーが集まりそうな若い雰囲気の宿もあれば、おばあちゃんがやってる古いタイプの宿もある。
今回どうしようかと考えて、初日は後者、2日目は前者を選ぶことに。
そして電話した時におばちゃんがフランクで気持ちのいい受け答えをしてくれた「いるもて荘」に決めたのだった。
受付をしてくれたおばちゃんは、やっぱりいい感じの人。
大原から歩いてきたと言うと「私はずっと住んでるけど歩こうと思ったことはないよ!」とびっくりして、いたわってくれた。
案内された部屋は、こんな感じ。
シンプル&広い!
クーラーも完備。
荷物の軽量化を考えて服を2セットしか持ってきていないので、まずはシャワーを浴びて洗濯して、ゆっくり足を休ませる。
18時半に夕飯を食べに食堂へ。
予約時に晩ご飯が必要な場合はあらかじめお願いしておくシステムで、食堂に入ると他に50代くらいの男性2人、女性1人のお客さんがいた。
コロナ情勢を踏まえて、みんな別のテーブルに着席して同じ方向を向くスタイル。
電話予約の際に夕飯がいるかどうかを聞かれ、食べますと答えたら、「うちのご飯はたいしたことないんですよ、近くに居酒屋さんもあって、そちらにした方がおいしいかもしれないけど、どうします?」と自信なさそうに改めて聞かれていた(笑)
むしろその受け答えに好感を持つ方な僕。
「いや、おばちゃんのご飯が食べたいのでぜひお願いします」と答えたのが大正解。
出してくれたご飯は、温かい家庭料理だった。美味しかった。
美味しいご飯をいただいたあと、ソーシャルディスタンスは保ちながら、ほかのお客さんとしばし喋って過ごした。
何度も沖縄に来ている女性は宿にあった三線を弾き、男性2人はこれまでの山登りの話に花を咲かせている。
「そこに置いてある本は私が書いたんですけどね、西表島の研究を長くやっているのです」という男性は安間さんと言い、西表島、とりわけイリオモテヤマネコの研究で有名な方らしい。
昔、西表島を歩いて一周もされたことがあるらしい(白浜の先も船を使って、砂浜を歩いて本当に一周)。
今日1日で歩いた距離はおよそ37km、歩数は46,695歩だった。
明日は白浜という北の港まで、15kmを歩く予定。
《後編へつづく》
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